#コインランドリーカタルシス

3月9日、えのもとぐりむさんの作品「コインランドリーカタルシス」を観劇してきました。
前回の観劇の繋がりでCチームを選びました。

えのもとぐりむさんの作品は今回が初めてですが、すっかりこの世界観に浸りました。
言葉の選び・運びが繊細で、私がここで触れてよいものか…自信がありませんが、この感情は形にしておきたいので、今回も語ります。

ネタバレどころか内容がガッツリ出てきます。ご注意ください!
というか、内容を知らないとこの記事の内容もよくわからないかもしれません。

カタルシス

そもそも「カタルシス」とは何か。

「精神の浄化作用」のことです。
(中略)
一般化して、「心の中にあるわだかまりが何かのきっかけで一気に解消すること」をいいます。
出典:三省堂 辞書ウェブ編集部による ことばの壺

つまり、コインランドリーを通じて心のモヤモヤを解消する、ということでしょうか。

登場人物は「僕」「君」「男」「女」とナレータ兼BGMの「声」。
「僕と君」はコインランドリーをよく使っていた元カップル。
「女」はコインランドリーのオーナーで、そこで「僕」は「男」と出会います。

──くるくる巡る 目くるめく日々 うつろう。

「君」が「僕」に言ったセリフの一節です。
「僕」はその意味が掴めない様子。

──同じように過ぎていく日々でも、気持ちは少しずつ移り変わっていく。

コインランドリーで洗濯が終わるのを待つのが好きだという「君」は、そう答え合わせをします。
好きなのは君だけだよ、と「僕」は「君」に言うんです。

切ない。好きなのは君だけ。

この作品はセリフに何重の意味もあって、あれはあれとつながっていて、みたいなのがたくさんあります。
これがえのもとぐりむさんなのか…。

感情移入

私もちょっと前まで彼女が居ました。いや、形式的に言えば彼女ではなかったですが。
実質、一緒に住んでいたりもしました。
およそ5年間。もう連絡を取らなくなって半年くらい経ちますが、こんなに離れたのは初めてです。
変わらない日々でも、気持ちは少しずつ変わっていってしまった。本当にそう思います。

──乾いていくのに時間が必要なのかは君が一番わかり始めているだろう

そうです。
沢山洗濯をすれば、その分乾くのに時間が掛かるんです。沢山一緒に居れば、忘れるのにも。

──心をかき混ぜ飽きたんだ、おおよそきれいにはなったんだけど。

なんでこの作品は私の気持ちを全部先にしゃべってしまうんだろう。

──洗っても落ちないものってあるよね

内容を知ってから見に来た作品ではないので、完全に不意打ちです。
泣き出すと嗚咽になるので、必死に我慢…。

「僕」は「男」に元カノの存在とストーリーを話し、次第に打ち解けていきます。
その流れで二人で、2年前に別れた「君」を探しに行き、結果的には会うんです。知らない街の別のコインランドリーで。
「君」はデキ婚しているんですよね。

それでも「君」は、あのコインランドリーが過去イチだと言うんです。
言葉に隠された思いを正しく受け取れているとしたら、もうこれは未練ですよね。辛い。

全部話し出すと多分この記事だけで台本が再現されてしまうのでこのあたりにしておきますが、友情と恋愛と。そういうお話です。実は「男」と「女」にもストーリーがあったり。それが複雑に、でも単純に絡まって、ほどけて、繋がって、お話が終わります。
今後も、えのもとぐりむさんの作品、見てしまうかもしれません。

演者さん

「僕」は塚本英亜さんです。顔立ちが良すぎます。イケメン。
うまく人の気持ちを受け取れない、でも完全な不器用でもないんですよね…この難しい表現を最後までやりきっていました。
長いセリフばっかりあって、感情の上下が難しそう!

「君」は荒木美穂さんでした。さっぱりしているの文学少女で、言葉遣いには厳しい!そんなキャラクターでしたが、あれ、荒木さんって元々そういう性格なのかな?ってくらいぴったりでした。言葉の奥にある思い、めちゃめちゃ伝わってきていました。面倒見の良いお姉さんやお母さんの役がとっても似合っています。きっと良いお母さんになるんだろうなあ。

「女」はワタナベルナさんです。キャリアウーマンらしさを感じる女性という設定ですが、本当にこういう女性いますよね。モチーフがリアルで、作家としては饒舌でも、現実はそう上手くいかない。でも金はある。そんなバランスの女性役でした。ワタナベルナさんがなるべくしてなった役柄であることに間違いありません。

「男」は村上直樹さんです。村上さんの話し方がもう。キャラクターそのものでした。こんな人に出会いたい。
──せっかくなんて考えなくていいんだよ
このセリフ、追い打ちで何度か出てくるんですが、これこそカタルシスです。「男」のセリフは私の蟠りを一つひとつ溶かしていって、涙に代えてくれました。特に「君」に再会した後の「僕」の話に相槌をするシーン。自分だって思うところはたくさんあるのに、ネガティブな「僕」のセリフを全部ポジティブに返していく。間、声、表情、全部が今でも鮮明で、今でも少し泣きそうです。

そして「声」はつぶたべりーさんでした。ほぼお歌担当ですが、きれいな歌声だったので歌手かと思ったらゲノムの団員さん、つまり役者さんでした。びっくり!「声」役は全チームつぶたべりーさんなんです。指がちぎれるほど練習したそうです。すごい…。

まとめ

本当に、思いがけずして不意打ち。自分にピッタリな作品に出会ってしまいました。
油断していました。まさか泣かされてしまうなんて。

もしかすると、特に村上さん演じる「男」は、しばらく私の心に居てくれるかもしれません。いや、星になって照らしてくれているのかも。
観劇側の精神も浄化してくれる作品に出会えたことも、めぐりあわせ。こういうのってあるんですね。

実はCチームは今日が千秋楽。良いときに観ることができました。
最後の方、感情が籠りきってましたよ。きっとお客さん全員、引き込まれた瞬間があったはずです。


やっぱり観劇はやめられません。本当はもっと言いたいこと山ほどあるはずなんですが、体が吸収しきってしまって言語化できないや。

役者のみなさま、スタッフさん、そしてえのもとぐりむさん。とっても良い作品をありがとうございました。
今後の私の一部として生きていく作品になりそうです。

3/9 うたうた

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